はじめに
この記事ではシリーズで伝説の剣豪・剣士・剣の達人を紹介しています。日本の歴史上の中で侍、武士が数多く名を残してきましたが、今回紹介する伝説の剣豪・剣士・剣の達人は【荒木又右衛門】です。【荒木又右衛門】は江戸3大仇討ちの一つとされる鍵屋の辻の決闘で超有名人となった伝説の剣豪です。それでは【荒木又右衛門】について流派や出身地も含め簡単に説明します。
荒木又右衛門
名前:荒木又右衛門保知
流派:柳生新陰流
出身:伊賀国
年代:戦国時代~江戸時代初期(1598~1640)
仇討ち決行以前の荒木又右衛門
荒木又右衛門は慶長3年(1598)に服部平左衛門の次男として伊賀国服部郷荒木村で生まれました。
父は藤堂高虎に仕えていましたが訳あって浪人し、その後に備前岡山藩の池田忠雄に召し抱えられました。
岡山に移った父には渡辺内蔵助数馬という同僚ができ、のちに又右衛門は数馬の娘を娶って、二代目数馬や源太夫と義兄弟の縁となっています。
又右衛門は12歳のときに桑名藩・本多政朝の家臣・服部平兵衛の養子となりましたが、本多家が姫路に移ったあとに浪人し、生まれ故郷の伊賀に戻りました。
故郷では、はじめ菊山姓を名乗り、のちに荒木姓を改姓したといいます。
また、又右衛門は幼い頃から父から「中条流」、叔父から「神道流」、また故郷からほど近い柳生庄で「柳生新陰流」を学んだといわれています。
やがて又右衛門は兵法者として名を知られるようになり、大和郡山藩・松平忠明に召し抱えられ剣術師範役に取り立てられました。
そしてある日、郡山で道場を構えていた又右衛門のところに義弟の渡辺数馬(二代目)が訪ねてきます。
数馬の用件は、弟・源太夫の仇討ちを行うための助太刀のお願いでした。
仇討ち至った理由
源太夫は藩主・池田忠雄の特別な寵愛を受けた美男子でしたが、河合又五郎という男もこの源太夫に恋をして執拗に関係を迫っていました。
この頃、元服さえしてしまえば男色の対象としてはならないという慣習があったため、源太夫は早々に元服して又五郎の要求に拒否の姿勢を示します。
すると拒否された又五郎は可愛さ余って憎さ百倍となり、逆上して源太夫を斬り殺し、藩を飛び出してしまいました。
その後、寵臣を殺された池田忠雄は逃げた又五郎の捜索を行い、旗本の家に匿われていることを突き止めます。
しかし、旗本には藩主とて容易に手が出せず、いたずらに時が過ぎる中で池田忠雄は急逝してしまいました。
池田忠雄は死の間際に「読経よりも又五郎の首を墓前に供えよ」と遺言したといいます。
伝説となった鍵屋の辻での仇討ち
数馬の話を聞いた又右衛門は仇討ちを了承し、藩を離れて仲間を募り機会をひたすら待ちました。
そして寛永11年(1634)、ついに又五郎の一行が伊賀路にさしかかるという情報を得た又右衛門たちは急行して仇討ちに臨みます。
この時、又五郎一行の中には又五郎の叔父で同じ郡山藩武術師範の河合甚左衛門、尼崎藩槍術師範の桜井半兵衛がいました。
伊賀上野鍵屋の辻で行われたこの仇討ち。
まずは又右衛門が馬上の河合甚左衛門の足を薙ぎ、返す刀で斬って即死させました。
その間、桜井半兵衛には小者2人を当たらせて得意の槍を渡さないようにさせ、刀の勝負で又右衛門が半兵衛に深手を負わせます。
半兵衛との斬り合いの最中、城下から駆けつけた藤堂家の家臣が「何事だっ」と声をかけると、又右衛門は「おう、仇敵でござる」と余裕で返事したといわれています。
また、又右衛門が半兵衛を倒したとき、逆上した又五郎側の小者が背後から木刀で打ちかかってきました。
又右衛門は振り向いて刀で受けましたが、刀身が折れてしまい、のちに藤堂家の家臣・戸波親清から「大事な時に折れやすい新刀を用いるとは不心得である」と批評されています。
これを聞いた又右衛門も己の不覚を悟り、のちに数馬と共に「戸波流」戸波親清に入門しています。
一方、仇討ちの目的である河合又五郎には渡辺数馬が対峙し、数時間に及ぶ死闘の末に又五郎を討ち果たしました。
本懐を遂げた二人は藤堂家に客分として預けられましたが、その後鳥取藩主・池田光仲の誘いで鳥取に移りました。
しかし、又右衛門は鳥取に移ってすぐに42歳の若さで死んでしまいます。
死因については仇討ちの相手・河合一派による毒殺説などがささやかれたといいます。
おわりに
鍵屋の辻の決闘の際、荒木又右衛門の豪剣っぷりは「36人斬り」などと誇張されていますが、実際に斬ったのは2人だけ。
平和な時代の江戸時代において、忠臣蔵のように「仇討ち」という珍しい事件が庶民の中で又右衛門を「伝説の剣豪」に祭り上げていきました。
美談のように語られることが多いこの「仇討ち」ですが、その原因は美男子を巡る嫉妬と憎悪によるもの。
原因を突き止めると「知らなきゃよかった・・・」と思う事件です。
又右衛門もどんな気持ちで仇討ちに臨んだのか・・・
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