大河ドラマ【いだてん】
関東大震災
大河ドラマ「いだてん」では、これまで金栗四三のオリンピック、マラソンへの情熱と、その後の女子スポーツへの普及への思いを中心に描かれてきましたが、第23話からは新たなテーマが加わることとなります。
それが『関東大震災』からのスポーツによる復興というもの。
大きな被害を受けて悲しみ、苦しむ人々のために、弟子のシマが行方不明になっていても前をむいて金栗四三が走るのです。
この『復興』への取り組みで、「いだてん」前半が終了となってしまうのですが、この記事では金栗四三編の終盤に起こった未曾有の大災害『関東大震災』について簡単に紹介していきます。
シマの残酷な運命
関東大震災の特徴
関東大震災は、大正12年(1923年)9月1日11時58分32秒に神奈川~東京を中心として茨城、千葉、静岡まで広い範囲で大きな被害をもたらした大地震。
建物倒壊などの圧死よりも、火災による死傷者が多くを占めたのが関東大震災の特徴である。
関東大震災の火災被害
地震発生が昼食の時間帯と重なったことから多くの火災が発生し、それが日本海沿岸を北上していた台風に吹き込む強風にあおられて東京市の約43%を焼失させる大火災へと発展した。
全犠牲者約10万人の中、火災での犠牲者が約9万ともいわれ、建物被害は全壊が約11万棟、全焼が約21万棟だった。
なお、地震後の中央気象台には大規模な火災が迫りつつあり、翌2日未明には最高気温46.4度というありえない気温を観測している。
出典:https://imagelink.kyodonews.jp/
関東大震災の地震被害
東京市内の建造物の被害としては、「いだてん」で多く登場してきた浅草のシンボルタワー・凌雲閣(浅草十二階)が大破。
また、建設中だった丸の内ビルディングも崩壊し、作業員約300名が圧死した。
山崩れや崖崩れ、土石流も山間部で発生し、神奈川県では走行中の列車が土石流によって駅舎・ホームもろとも海中に落とされ、100人以上の死者を出した。
津波は太平洋沿岸の相模湾と房総半島で発生し、高さ10m以上の津波が記録された。
凌雲閣(浅草十二階)
バラック(仮設住宅)の建設
政府も内務省・外務省・警視庁などの建物も多く被害を受けたが、震災翌日には山本権兵衛が新総理に就任(発生当時は総理が不在だった)。
山本首相は「帝都復興院」を設置し復興事業に取り組んでいった。
震災直後から東京の多くの住民は近隣の避難所へ移り、1万2,000人以上の集団避難地が160か所もあった。
これに対し、内務省・震災救護事務局は明治神宮外苑、宮城前広場などに陸軍から借りたテントを設営し、東京府と共にバラック(仮設住宅)を建設した。
また、官民の枠を超えた支援により、明治神宮や日比谷公園などには数千人規模のバラックも建てられ、小学校の焼け跡や校庭にも次々とバラックが建設された。
震災から約2か月後には101か所にバラックが建てられ、収容された者は8万6,581人にのぼっている。
震災後の治安悪化
避難民が密集したバラックでは、その後に治安が悪化していった。
このため、翌年には国と警視庁、東京市が協議して小規模住宅群を造成し、バラック撤去を開始していく。
治安維持の失敗により警察や消防は信頼を失った一方、軍は治安維持のほか、分け隔てなく被災者を救護したため、民衆からは頼れる存在になっていった。
デマの流布と朝鮮人虐殺
東京にあった新聞社の多くは大火によって焼失し、報道機能が麻痺。
関東以外の地域は情報収集ができず、新聞紙上では「東京壊滅」「政府首脳全滅」などのデマが取り上げられた。
また、混乱に乗じて朝鮮人が凶悪犯罪、暴動を起こしているとのデマも広がり、民衆や警察、軍人によって朝鮮人が殺傷される事件が多発した。
さらに、中国人や耳の聞こえない日本人なども朝鮮人と間違えられて巻き込まれることがあった。
これらを収束させるため、政府は緊急勅令「治安維持の為にする罰則に関する件」を出し、これがのちの治安維持法の前身となっていった。
関東大震災が与えた影響
9月3日に戒厳令が発布され、陸軍は戒厳令のもとで騎兵を派遣し、軍隊の到着を人々に知らせた。
人々に安心感を与えるのが狙いだったが、軍隊の物々しい雰囲気に不安を覚える被災者も多かった。
また、この戒厳令によって警官の態度が高圧化したともいわれている。
その他、避難の教訓からラジオは急速に普及し、国威発揚にも利用されていった。
山本権兵衛首相を総裁とした「帝都復興審議会」は大規模な復興計画を掲げ、江戸時代以来の東京市街地の大改造に取り組み、道路拡張などのインフラ整備を進めた。
これに伴って自動車の価値が向上し、保有台数が激増。その後の世界恐慌があってもなお、自動車保有者は増加し続けていった。
これら復興事業は債務を急増させる原因ともなったため、その後の昭和金融恐慌を引き起こすことになっていくのである。
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