日本の神様 日本神話
【国譲り②】
大国主命(オオクニヌシ)が治めるようになり、葦原中国(地上世界)は大いに発展していきますが、高天原(天上の世界)の天照大御神(アマテラス)らは、葦原中国は我々が治めるべき国であると宣言し、オオクニヌシの元に神々を派遣します。
しかし、2度に亘り失敗し、ついに雷神、建御雷之男神(別称:建御雷神、武甕槌神、武甕雷男神、建布都神 タケノミカヅチノオ)が派遣されることになります。
タケノミカヅチノオは伊邪那岐命(イザナギ)が火之迦具土神(カグツチ)の首を斬った際、飛び散った血から産まれた三柱の神様のうちの一柱です。
鹿島神宮、春日大社などで祀られたこの神様は、武家からの信仰も篤く、軍神、武神として信仰されてきました。
今回は、タケノミカヅチオの活躍と「国譲り」と呼ばれる神話について説明します。
建御雷之男神の誕生について↓
建御雷之男神と大国主命、事代主命
どうあっても葦原中国を手に入れたい高天原の神々は、タケノミカヅチオの派遣を決定。
タケノミカヅチノオは、船の神である天鳥船神(アメノトリフネ)と出雲の国の伊耶佐(稲佐 イナサ)の小浜に降り立ちます。
そこに神剣、布都御魂(フツノミタマ)の柄を波頭に差して、切っ先を上に向けて剣先にあぐらをかいて座り、オオクニヌシに語りかけます。
「葦原中国は、アマテラスの御子が治めるべき国だとアマテラスが宣言されたが、お前の心はどうなのだ?」
半ば脅迫ですよね。でもちょっとカッコイイ・・・
出典:http://www.owasoku.com/
オオクニヌシは、
「私からは申し上げられません。すでに跡を継いだ事代主命(コトシロヌシ)がお答えするところですが、いまは美保に出かけております」
と答えると、タケノミカヅチノオはアメノトリフネにコトシロヌシを連れてこさせて国譲りについて尋ねました。
コトシロヌシは
「この国は天の御子に譲ります」
アッサリ・・・
コトシロヌシは承諾すると、海の中に青柴垣を作って隠れてしまいました。
ちなみに、この時コトシロヌシは天の逆手を打つという行為、呪い(まじない)をしています。
本居宣長は「古事記伝」の中で、左右の手のひらを外側に向けて逆さまに打ち合わせる呪いの方法であるとしています。
コトシロヌシの嫌がらせだな
建御雷之男神と建御名方神
剛力の持ち主であったオオクニヌシの子、建御名方神(別称:建御名方富命 タケノミナカタ 以下ミナカタ)は、国譲りに納得いきません。
敵味方のくせに名前がややこしい
ミナカタはタケノミカヅチノオ(以下、ミカヅチ)に対し、自信満々に力比べを挑みます。
ミナカタがミカズチの手を掴もうとすると、ミカヅチの手が氷柱となってしまい、それが剣へと変わります。
ビビったミナカタの手を今度はミカヅチが掴み、やわな若い葦でもつまむように握り潰し、体ごとブン投げられてしまいました。
ミカヅチ=やっぱりラオウ
出典:http://p.twipple.jp/user/mad_yn/20
敗れたミナカタは、出雲の国から逃げ出して、科野(信濃)の国、州羽(諏訪)の海(諏訪湖)に追い詰められました。
ミナカタは、ミカヅチに殺されそうになりますが、国譲りに同意して、この州羽の地から外にでないで暮らすことを誓って許されます。
半べそ
おわりに
オオクニヌシは、要求通り稀にみる高さの出雲大社に祀られ、時代を経ると七福神、大黒天とも結びついていきます。
コトシロヌシは、同様に七福神、恵比須と結びつきます。
ミナカタは、諏訪大社で軍神として祀られています。
敗れた感の強い、出雲の神様達ですが、庶民に愛される神様として信仰されていることからも古代から人気の高い神様であったに違いありません。
ミナカタも本編では情けない印象を受けますが、実際は諏訪地方の神様でヤマト王権成立以前から信仰されていたものを、古事記編纂時の有力豪族である中臣氏(藤原氏)が祖神として祀るミカズチを強調するため付け加えられた話かもしれません。
負けた側でもここまで信仰されていてホントによかった。
負けた国津神で一番の「敗者」とは↓