大河ドラマ西郷どん(せごどん)
とぅま(愛加那)の入れ墨・刺青の意味
大河ドラマ西郷どんの18話「流人 菊池源吾」から登場する二階堂ふみが演じる「とぅま(愛加那)」という女性。
この「とぅま(愛加那)」はのちに西郷の妻になりますが、少し気になったのは「とぅま(愛加那)」が手にしている入れ墨(刺青)。
奄美大島独特の文化だとは思いますが、どこか東南アジアの雰囲気も持ったこの「とぅま(愛加那)」の入れ墨(刺青)について調べてみましたので、今回簡単に紹介します。
奄美大島の入れ墨(刺青)文化
そもそも奄美大島は本土よりは沖縄に近いことから、古来より琉球王国統治下にあって、本土とはまったく異なる文化がありました。
大河ドラマ西郷どん(せごどん)で登場する「とぅま(愛加那)」が手の甲にしている入れ墨(刺青/ハジチ/ハジキ)は、この琉球文化の影響を多大に受けたものでした。
琉球諸島では女性が成熟した証として、手の甲に入れ墨(ハジチ)をする風習があり、元来は処女の手に、女性のたしなみ、成人の証、魔除けとして施されたものでした。
※ハジチを漢字では「針突」と表します。
女性のたしなみ、成人の証として
当時の女性は16~17歳が結婚適齢期とされていました。
このためハジチは13歳ぐらいから部分的に入れ始め、16~17歳の頃に婚約したらその文様を完成させました。
原則として、22個の文様を持って完成とし、地位によって文様は様々だったようです。
13歳から入れ始めるというのは、初潮を迎えた女性を成人として祝う意味もあったのではないでしょうか。
大河ドラマ西郷どんの原作である林真理子著『西郷どん』では、「とぅま(愛加那)」は13歳の時、右手の指に一本一本にはインノヒの花びら、甲には龍眼を入れたとあります。
そして、女性は嫁ぐと左手にもハジチを入れるのが女性のたしなみであるとされています。
出典:http://manyu.cocolog-nifty.com/
魔除けとして
ハジチは成人の証、結婚儀礼としての意味の他にも、魔除けの意味も持っています。
当時は、ハジチがないと死んだ時に鬼にいじめられて極楽に行けないと信じられていました。
現地にはハジチをしていないと成仏できないという歌もあり、ハジチをする前に亡くなってしまった子供の手に、死後ハジチをしたという話も残っています。
そもそもハジチが魔除けとされたのは、刺青をした手が遭難していた船を支えて難を逃れたという故事に由来しているとも言われています。
また、ハジチをしていれば本土へ連れ去られないと信じられていたとも言ったそうです。
まとめ
このようにハジチは「結婚儀礼」として大きな意味を持ち、さらに「宗教儀式」のような側面を持っていたことが分かります。
西郷隆盛は手紙で奄美大島の習慣が野蛮だと揶揄していますが、奄美大島の女性にとってハジチは女性の「誇り」でもあり生活の一部です。
西郷は「とぅま(愛加那)」を妻に迎えることで島の文化を受け入れることができたようですが、ハジチの習慣は明治時代に入って政府から規制がかけられました。
それでも昭和初期までは秘かに行われていたと言われています。