大河ドラマ西郷どん(せごどん)
島津日新公いろは歌とは?
大河ドラマ西郷どん(せごどん)の中で、西郷小吉(のちの隆盛)が少年たちに教える「島津日新公いろは歌」。
今回は薩摩独特の教育システム「郷中教育」の中で、基本ともなっているこの「島津日新公いろは歌」について簡単に紹介します。
島津日新公いろは歌
「島津日新公いろは歌」とは戦国時代、島津家中興の祖と呼ばれた島津忠良(日新斎)が完成させた薩摩藩の「郷中教育」の基本となったといわれる47首の歌。
孫である島津義弘も大きな影響を受け、その後、薩摩武士の教典となった。
この「島津日新公いろは歌」全47首を紹介すると大変なので、筆者が特に印象に残ったものだけ以下に抜粋して紹介します。
【い】
「いにしへの道を聞きても唱へても わが行に せずばかひなし」
昔の立派な人の教えを聞き、話すだけでは意味がない。実践するため行動がすることが大事。
【ろ】
「楼の上もはにふの小屋も住む人の 心にこそは 高きいやしき」
立派な家に住んでいようが、ボロ小屋に住んでいようが、そんなことで人の価値は判断できない。心のありようによって、その価値が決まる。
【は】
「はかなくも明日の命を頼むかな 今日も今日と 学びをばせで」
明日のことは誰もわからない。明日、死んだらどうする?今日この日の勉学を大切にすべき。
【に】
「似たるこそ友としよけれ交らば 我にます人 おとなしきひと」
人は自分と似た人と友達になるが、それだけでは進歩はない。自分より優れた人を友として自己研鑽しなさい。
【ほ】
「仏神他にましまさず人よりも 心に恥ぢよ 天地よく知る」
神仏はどこにでもいるものではない。自分の中にいるのだ。恥ずべき行動をしたら、自分の良心に恥じよ。世間は欺けても自分の心は欺けない。
【わ】
「私を捨てて君にしむかはねばうらみも起こり 述懐もあり」
君主に仕えるには、自分を捨てないと不平不満がでる。自分の身を捧げて仕えよ。
【よ】
「善きあしき人の上にて身を磨け 友はかがみとなるものぞかし」
自分の行動の善悪を知ることは難しい。しかし他人の行動の善悪は目につく。友人を見て良いことは見習い、悪いことは反面教師とせよ。
【な】
「名を今に残し置ける人も人 こころも心 何かおとらん」
歴史に名を残した偉人も人間。私達と違いはない。心も同じ。私達が及ばないことはないから努力せよ。
【ら】
「楽も苦も時過ぎぬれば跡もなし 世に残る名をただ思ふべし」
苦も楽も過ぎてしまえば跡形もない。後世に名声を残すような行いだけをひたすら心がけよ。
【く】
「苦しくも直進を行け九曲折の 未は鞍馬のさかさまの世ぞ」
苦しくても、ただ真っすぐ正道をいきなさい。曲がった道を行った者は、必ず闇の世界に落ちる。
【て】
「敵となる人こそ己が師匠ぞと 思ひかへして 身をも嗜め」
敵となる人を、自分の師匠と思え。思い直して反面教師として手本にもなる。
【せ】
「善に移りあやまれるをば改めよ 義不義は生れつかぬものなり」
悪いと気づいたらすぐに改めよ。義、不義は生まれついてのものではない。心のあり方で義にも不義にもなる。
どうですか?他にもためになる歌はたくさんありますが、12首だけ抜粋しただけでも現代にも通じる教えはたくさんあったと思います。
中には、「なんだ普通のことだな~」、「当然だろ!」と思う方もいらっしゃるかもいるかも知れませんが、島津日新斎のスゴイところは教えを全て「いろは歌」にしたことです。
歌にすることで子供たちに覚えやすくし、大人になっても忘れないという効果を与えているところが、この「島津日新公いろは歌」の優れたところではないでしょうか。