大河ドラマ麒麟がくる
狐女房の説話
大河ドラマ「麒麟がくる」で門脇麦が演じる駒は、明智家でおしゃべりしている時にある和歌を思い出します。その和歌というのが美濃に伝わる「狐女房」の説話にまつわるものでした。「狐女房」の説話は平安時代初期にまとめられた説話集『日本霊異記』に収録されていますが、この記事では簡単に「狐女房」を紹介すると共に、大昔にテレビ放送されていた「日本昔話」でも放送された「きつね女房」との相違点、さらにこの話の裏に隠された驚愕の事実をお伝えしようと思います。
どんぎつねの元祖が「キツネ女房」
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日本霊異記の「狐女房」の内容
美濃国大野郡に住む男が妻探しに出かけ、広い野原で美女と出会いました。
その女は男に興味津々で、自ら近づいてきたので男は「どこへ行くの?」と聞くと、女は愛想よく「良縁を探しに行くの」と返事したため、男はその場で求婚して二人は結婚します。
二人の結婚生活は円満で、やがて男児も生まれましたが、二人が飼っていた犬が子犬を産むと、その子犬は妻に吠えかかり、全く慣れることがありませんでした。
子犬たちの妻への敵対心は成長に伴ってエスカレートし、ある日妻は驚きのあまり、野干(キツネの旧名)の姿に戻ってしまいます。
しかし、夫はそんな姿を見ても「お前を忘れられるわけない。せめて毎晩おれと一緒に寝て欲しい」と言い、妻はこれに従いました。
それ以来、野干のことを「来つ寝(きつね)」と呼ぶようになったといいます。
やがて妻のキツネは、夫のことがいたたまれなくなり、自ら立ち去っていきました。
この時、夫は「恋しさでいっぱいだ。少しだけしか逢瀬(性交)していないのに遠くに行ってしまったから」と和歌を詠みました。
その後、二人の子は「岐都禰(キツネ)」と名付けられ、怪力、快足の成人に育ち、「狐の直(きつねのあたえ)」という称号をもらいました。
これが美濃の豪族・狐直氏の起源となったといいます。
日本昔話の「きつね女房」の内容
農民ナリノブ(まるで武士のような名前w)が農作業中に女性を助け、その後に結婚して男の子・モリメが生まれました。
しかし、ある日このモリメが病にかかってしまい、ナリノブと嫁は農作業をほったらかして看病することに。
二人の看病の甲斐もあり、モリメは元気になりましたが、この間にナリノブの田んぼは荒れ果ててしまいました。
田植えの時期なのに苗が植えれないと嘆くナリノブ。
しかし次の日、ナリノブが田んぼに行ってみると、何故か苗が全て植えられていました。
ナリノブは自分の目を疑いましたが、冷静に見てみると田んぼの苗は全て逆さまに植えられています。
かと言って、ナリノブは何もすることができないので、とりあえず家に帰り、この不思議な光景を嫁に話しました。
すると、この話を聞いた嫁は、突然田んぼの方に向かって駆け出していきます。
そして嫁は田んぼの周りで走り回り、「検見を逃し、稲穂よ実れ」と意味不明な歌を歌っていると、嫁はみるみるうちに白キツネに変身。
逆さまだった苗が次々にひっくり返っていきました。
やがて、全ての苗が正常な状態になったのを確認した白キツネはナリノブに、「好きでした。でも山に帰ります。サヨナラ」と告げて空の彼方に飛んで行きました。
秋になり、年貢の徴収分を計算するため、検見(役人)が村の田んぼを回ってきます。
しかし、ナリノブの稲だけは穂をつけていなかったため、検見はナリノブから年貢を徴収することを諦めて帰っていきました。
その後、モリメを背負ったたナリノブが田を見つめていると、不思議なことに穂が実っていきます。
「検見を逃し、稲穂よ実れ」の意味をナリノブはやっと理解するのでした。
出典:日本昔話「狐女房」
狐女房に隠された驚愕の事実
「狐女房」の話はいくつかバリエーションがあるらしく、「鶴の恩返し」として有名な「鶴女房」に似た話となっています。
しかし、「狐女房」には「鶴女房」のような『のぞき見』による夫婦の破局の話はなく、夫のため、家族のために女房が自ら去っていくという話になっています。
このように、素直に見れば「狐女房」は優しさに溢れた話なのですが、一説によると裏には相当きわどい当時の風習が隠れているといいます。
「狐女房」が収められている『日本霊異記』が成立した当時(平安初期)、世の中には「畜犯せる罪」という罪がありました。
これは、つまり「獣姦」を禁止する法令があったことを示し、逆を言えば当時の人たちは頻繁に「獣姦」を行っていたことになります。
そんな法令の中、「獣姦」にハマっていた者が気持ちを抑えきれずに「狐女房」のような純愛ストーリーを作り出したというのです。
マジで怖すぎます・・・・この話。
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